麻布十番の妖遊戯
一通り腹も心も満たされたところで、たまこが皆の食べ終わった皿を重ねて台所へ持っていく。
腕まくりをした。洗い物をするのはたまこの仕事になっているのだ。
手際よく洗い物を終えると布巾できれいに拭いて元のところに戻し、こたつに戻ったところで、たまこが切り出した。
「で、侍さんはどうして妖怪になってしまったの?」
分厚いノートを自分の前に引き寄せてえんぴつの先をペロンと舐めた。
「おいおいたまこちゃん、そんないきなりどうして妖怪になってしまったの? は、ねえわなあ。話には前置きってもんがあんだろうよ。ま、俺は自らが好き好んでこうなってんだけどな。それに、なんで俺が妖怪だって思うんだい? まだちゃきちゃきの人間かもしれないんだぜ」
侍があやふやな言い方でたまこに言うと、爪楊枝を歯間に食い込ませた。
「ううん、それはないです。絶対人間じゃない。わかるもん。だって侍なのにメロンソーダが好きなのってなんか変だし、首の周りに一周切られた傷があるのに生きてるし、それに影の内からぬうって出てくるもん。だから妖怪決定」
たまこがえんぴつで侍の首の傷を指さした。
腕まくりをした。洗い物をするのはたまこの仕事になっているのだ。
手際よく洗い物を終えると布巾できれいに拭いて元のところに戻し、こたつに戻ったところで、たまこが切り出した。
「で、侍さんはどうして妖怪になってしまったの?」
分厚いノートを自分の前に引き寄せてえんぴつの先をペロンと舐めた。
「おいおいたまこちゃん、そんないきなりどうして妖怪になってしまったの? は、ねえわなあ。話には前置きってもんがあんだろうよ。ま、俺は自らが好き好んでこうなってんだけどな。それに、なんで俺が妖怪だって思うんだい? まだちゃきちゃきの人間かもしれないんだぜ」
侍があやふやな言い方でたまこに言うと、爪楊枝を歯間に食い込ませた。
「ううん、それはないです。絶対人間じゃない。わかるもん。だって侍なのにメロンソーダが好きなのってなんか変だし、首の周りに一周切られた傷があるのに生きてるし、それに影の内からぬうって出てくるもん。だから妖怪決定」
たまこがえんぴつで侍の首の傷を指さした。