麻布十番の妖遊戯
「俺らが幽霊ねえ。しかも地縛霊ときたか。どこからその発想が出てくるのかねえ」
「まったく幽霊ごときと間違えられるとは心外だ」
太郎と侍がたまこを見下ろしてぶつくさ言っている。
昭子は大きく鼻でふんと笑い、太郎は腕組みをして体を左右に揺らして楽しそうだ。
「ねえ、たまちゃん、あんたが思うその地縛霊って奴はさ、こんな道の真ん中にあるちんけな家の中でさ、毎夜中に地縛霊同士が仲良く集まって面白おかしく話をすると思うかい?」
「そこが解せないところなんですよ昭子さん。だって昭子さんにはそういう怖いところがないんだもん。だからちょっと違うのかなあとも思います」
たまこがノートを閉じて正座したまま右隣の昭子ににじり寄る。
ノートをぽんと叩き、両の指を交差させてノートの上に置いた。
「この前もね、太郎さんがここに蝋燭を置いて、火を吹き消したときまでは覚えてるけど、そのあとの記憶が私にはないんです。ここに来てからずっとですよ。そのあとどこで何をしたのか全然覚えてなくて、気づいたらここにこうやって一人でいたんです。そのすぐ後にみなさんが現れて。だから別に留守番していたわけじゃないんですよ」
太郎が、「留守番ありがとう」と言ったのをいまだ覚えていたのだ。
だから、みなさんがどこで何をしているのかわからなくて。でも私は一人でここにいる。
気づくとここにいるし、また気づくと消えている。それにこの家の外に行ったことがない。
太郎さんが私に買い物を頼んでくれる時は外に出られるけど、でもそれ以外は出られなくて。
そんなんだからきっと私は皆さんとは違うんだなって思って。
地縛霊っていうのはどこにも行けないんでしょう? だから私は地縛霊だとしたら、ここが地縛霊の基地だと思って。で、そこにみんないるから……と付け加えた。
「だから、私も含めてみんな地縛霊かなって思ったの」
あっけらかんと言うたまこに、
「まったく幽霊ごときと間違えられるとは心外だ」
太郎と侍がたまこを見下ろしてぶつくさ言っている。
昭子は大きく鼻でふんと笑い、太郎は腕組みをして体を左右に揺らして楽しそうだ。
「ねえ、たまちゃん、あんたが思うその地縛霊って奴はさ、こんな道の真ん中にあるちんけな家の中でさ、毎夜中に地縛霊同士が仲良く集まって面白おかしく話をすると思うかい?」
「そこが解せないところなんですよ昭子さん。だって昭子さんにはそういう怖いところがないんだもん。だからちょっと違うのかなあとも思います」
たまこがノートを閉じて正座したまま右隣の昭子ににじり寄る。
ノートをぽんと叩き、両の指を交差させてノートの上に置いた。
「この前もね、太郎さんがここに蝋燭を置いて、火を吹き消したときまでは覚えてるけど、そのあとの記憶が私にはないんです。ここに来てからずっとですよ。そのあとどこで何をしたのか全然覚えてなくて、気づいたらここにこうやって一人でいたんです。そのすぐ後にみなさんが現れて。だから別に留守番していたわけじゃないんですよ」
太郎が、「留守番ありがとう」と言ったのをいまだ覚えていたのだ。
だから、みなさんがどこで何をしているのかわからなくて。でも私は一人でここにいる。
気づくとここにいるし、また気づくと消えている。それにこの家の外に行ったことがない。
太郎さんが私に買い物を頼んでくれる時は外に出られるけど、でもそれ以外は出られなくて。
そんなんだからきっと私は皆さんとは違うんだなって思って。
地縛霊っていうのはどこにも行けないんでしょう? だから私は地縛霊だとしたら、ここが地縛霊の基地だと思って。で、そこにみんないるから……と付け加えた。
「だから、私も含めてみんな地縛霊かなって思ったの」
あっけらかんと言うたまこに、