失翼の天使―wing lost the angel―
血液が引けたらシリンジを外し、針穴と同じサイズのチューブを挿入。



「わかりますか?」



「……あ、い……」



「後はやってよ。口だけリーダー」



「うぜぇなお前」



処置を終えてお役御免。

兄に後は押し付けて退散。

手袋をゴミ箱に捨て、白衣を羽織りながらカウンターチェアーへと腰を下ろす。

見学のつもりが、やり過ぎた。

でも、何もしなくても時間が長い。

帰ったところでやる事も、会いたい人も居ないから良いんだけどさ、つまらない。



「優海ちゃーん、お暇?」



「あ、はい」



「呼ばれたからよろしくね!1号室、使って良いから」



「はい」



脚を組み、ボーッとしてると診察室の裏扉から宮本先生が出て来た。

渡されたバインダーには問診票。



「よろしくお願いします」



「友田-トモダ-君。うん。よろしく」



診察室に行くと、宮本先生の介助に入ってた友田君に挨拶された。

看護師のユニフォームは淡いピンク。

それが似合うのに、何とも男らしい顔立ち。

眉毛がキッチリ手入れされてる辺り、20代だろうか。

この救命救急センターの中でしかわからないけれど、兄や鷺沼先生の顔立ちの良さに負けないレベルだ。

まぁ、鷺沼先生は院長が俳優並みだがら、改めて驚く事なく居たけど。
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