失翼の天使―wing lost the angel―
「すみません。我々は救命救急の医師です。消防への連絡は済みましたか?」



「ボク、わかるー?」



額からの出血。

頸動脈が触れ、血圧はまだ振れる範囲だろうか。



「持ち上げられますか?」



「相当重くて;;」



厚みのわりに幅が狭く、大人の男性が4人で何とか軽く持ち上げられてる。

赤のポロシャツに黒のデニムであり、汚れても何ら気にならない格好の為、地面に寝そべり、男の子の首元と脚の下に手を入れて何とか引きずり出した。

看板を倒したままにして貰い、そこに男の子を寝かせて触診に入る。



「あんた、血が……っ!」



「私は大丈夫です」



前腕をアスファルトで大きく擦り剥いてしまったけど、そんなの関係ない。



「……ダメだ。煩くて聞こえない」



「なっ、何して……!」



「骨盤骨折してます。救急車が来るまで、これで固定して、止血をします」



「持ちそうか?」



「……わかりません」



中にキャミソールを着込んでた為、チュニック丈のポロシャツを脱ぎ、長さを利用して男の子の骨盤を固定。

後出来る事は、心肺停止したら心臓マッサージをする位だろうか。



「そんな……っ、そんな……っ゛!!」



私の回答に泣き崩れる母親らしき女性。

救急車が来れば、まだ何とか……。
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