失翼の天使―wing lost the angel―
仲が良い事って良し悪しで、延々とくだらない話し合いが続く。



「良いな、あの親子関係」



「最初だけですよ、最初だけ」


隣の歯科医院の駐車場へと行くと、運転席側へ賴真が回る為、私は助手席側へと行く。

乗り込むと、ふと目が合う。



「…………?」



「いや。帰るか」



「……はい」



何となしに賴真の気持ちが読み取れたものの、こんな時にどうすれば良いのかわからない。

どうやって、もう少し一緒に居られるのか声を掛けられるだろう。

会話も勇気もなく近付くマンション。



「どうした?」



「……遠回り……;;いや、今日……来ませんか?;;」



こうなったらストレートに行くしかないと、私はウインカーに手を伸ばし、本来は直進の道を左折させる。



「泊まろうか?」



「……えぇ、そうしてクダサイ;;」



何故、私が辱めに遭ってるのか。

裏返る声。

オマケに棒読みの私。

ニヤニヤと笑いながら左へハンドルを切る賴真。

鷺沼家に寄り、着替えやピッチを取りに寄ってからマンションへと帰る。

…そういや掃除;;

いや、汚す事はこの歳でないし、綺麗にしてるつもりだけど、今日は掃除機をかけてない。
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