失翼の天使―wing lost the angel―
今度こそ部屋へと賴真を招き入れ、お風呂を沸かす間に晩酌の準備。

お腹が膨れてるかわかない為、冷蔵庫に作り置きしてるヒジキと切り干し大根を出し、小皿や箸と運ぶ。

チーズとかお洒落な物はないかと探したけど、こんな時に限ってない。



「すみません……こんな物しかなくて;;」



「すげぇ!うちの親、作れねぇよ!」



「ババ飯、平気なんですか!?」



「ん?祖母ちゃんに育てられたもんだからさ、恋しかったんだよ。祖母ちゃんが亡くなってから」



「良かった……っ」



缶ビールで乾杯し、ヒジキと切り干し大根を取り分ける。



「美味い!ヒジキ、鶏肉で出汁取ってる?祖母ちゃんと同じ味!」



「正解です。鶏ガラじゃなくて、具にもなるようにモモ肉で出汁を取りがてら作ってるんですよ。その出汁で煮物も作って、休みの日に作り置きしてるんです」



「ヤバい。胃袋掴まれるって、こういう事かもな……」



「ち、近っ……;;」



「俺はもっと近付きたいけど?」



ソファーの上で腰を引かれ、距離が近付いた。

顎を引き、胸元に置いた手で何とか距離をキープするも、強請るような声に顔を上げた。
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