失翼の天使―wing lost the angel―
私は落ちたCT画像を拾い、封筒と共に兄のところへと持って行く。



「誰のだ」



「予後はどれ位かって……」



「で、お前は見たのか」



「見たところでどうしろと!?前の話でも、好きだったあの人の死期を考えるなんて出来るわけないじゃない!!」



「「「『…………』」」」



画像を見た兄の一言に、怒りかもわからない感謝の全てをぶつけてしまう。

兄は封筒にある他の画像を宮本先生と賴真に手渡し、3人で考え込んだ。



「宮本どう思う」



「……1年、と言ったところでしょうか」



「だな。切ったところでだ。鷺沼は」



「…………」



「同じか」



「……温存療法なら、伸びるんじゃないですか?見た限りで、治療にも入ってないあの人には体力がある。腫瘍を今なら摘出出来る。ただ、転移の可能性があります。3分の1を残し、抗がん剤や放射線治療に切り替えれば、1年より……短くても3年は、望みはあるかと」



「後は、気持ち次第か」



「えぇ」



兄は私をチラリと見た後、CT画像を賴真へと手渡し、顎で診察室を指した。



「行ってくれ。諸事情により話せない」



「“諸事情”?」



「優海の事で……ちょっと」



…あぁ……。

病院に乗り込んだ時の、ね……。
< 119 / 219 >

この作品をシェア

pagetop