失翼の天使―wing lost the angel―
「でも、鷺沼先生は優海の現恋人よ?」



「医者としての務め……」



「説得力ないわよ;;」



「だから言うの止めただろ;;」



「行くか?」



「……うん」



賴真は特に気にしてないのか、診察室へと行こうとする。

私は頷き、後ろをついて行くと、2人はお互いに頭を下げ合った。



「噂で優秀な方だと覗っております。そんな方に申し上げにくいのですが……」



「いや、医者の自分の事となれば別です。はっきり言って貰って構いません」



「……では、お言葉に甘えて言わせて頂きますが、このまま何もせず貴方に死なれては困ります」



「はい……?」



「かなり困るので、とりあえず早急にオペして肺を3分の1切除した後、抗がん剤や放射線治療を受けて頂きます」



「あの、医者を続けたいんですが」



「えぇ。それは退院してからどうぞ。上手く行けば余命は1年から3年に延び、もしくはそれ以上です。無理して仕事を続けるよりは医者として長く出来ますよ」



「や、ですから……」



「貴方の病気を知り、死期に悩む恋人の姿は見たくないので。生きて貰いますよ」



「賴真……」



「あ……あぁ、……すみません……」



何も気にしてないわけないよね……。
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