失翼の天使―wing lost the angel―
手袋を嵌め変え、次は助手席の男性に取り掛かる。

脚は動くらしく、腹部の圧迫のみながら、後ろから追突された影響からかシートが動かせないようだ。



「エコー頂戴」



「……はぁ……」



「もう少し、頑張って下さい」



シート側に体重は預けてるとは言え、そろそろ疲れも出てるだろう。

エコノミー症候群の心配もある。

脚に触れれば冷たく、このままでは救出後にも危険度が増す。



「後、何分ですか?」



「5分……いや、8分で何とか……!」



救出作業を見守りながら、先を見越して友田君に準備させる。



「出せます!!」



--ポーンッポーンッ



「急いで下ろして!友田君、薬入れてって!」



救出直後、血流が再開した事によって急変。

ストレッチャーへと下ろさせ、私は急いで心マ。

友田君に用意させた薬剤を投与させながら、救急車へと運ぶ。



「頸動脈触れません!」



「大丈夫……戻って」



肋骨が折れない程度に留めながらも、どこか腕には必要以上の力がこもる。



「――先生!あちらの患者さんが嘔吐しました!」



「代わって下さい。挿管したら行く!友田君は付き添って、鷺沼先生に指示貰って出来る範囲でやって」



「はい!」



救急隊員と心マを交代し、挿管。

アンビューが嵌められ、エアーが入ってる事を確認して白車から降りる。
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