失翼の天使―wing lost the angel―
CTの画像データが届くまで間、診察室には重い空気が立ち込めた。



「……来ました!」



カルテの画像のページが更新され、開けばヒムカイさんの頭部CTの画像が映し出された。



「……娘さんだけ呼ぼう」



「呼んで来ます。どうぞ」



娘さんは待合に残ってる為、私はベッドに座ってた鷺沼先生に席を明け渡した。

ドアを開き、中へと促し、丸椅子に座って貰う。



「ここ。この影が血の塊なんですが、これのせいでお父さんは痛みもなく、記憶も飛んでしまってます。今は普通に歩いたり出来ますが、取り除かないと記憶力は更に落ち、歩く事も次第に出来なくなると思われます」



「じゃあ、手術をすれば……!」



「年齢から考えると、手術に耐えられない可能性があります」



「そんな……っ、」



「このまま、ご自宅で過ごされた方が良いと思います」



「そっ……そんな……っ……!だって、あ、あんなに元気なのに……っ、」



「ご家族の皆さんと、楽しく過ごさせてあげて下さい」



娘さんが落ち着くのを待ち、検査から戻ってから待合で友田君とお喋りして待ってたヒムカイさんと合流。

何事もなかったように振る舞い、センター外の料金所へと見送る。
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