失翼の天使―wing lost the angel―
耳と肩でピッチを挟み、MRIのオーダー連絡をしながら包交車に手を伸ばし、止血帯と脱脂綿が入った小瓶を取る仙田さん。

手袋を嵌めてそれを受け取り、上腕で血管を探す。



「……細いな……」



深い上に細い血管。

痛みで身体により負担を掛けさせない為にも何とかと思ったけど、諦めて手の甲から引く事に。

アルコール消毒し、シリンジがセットされた蝶々針を受け取り、針を刺す。

検査容器2本分を引き、エコーへと移る。



「……内科では何と?」



「ストレス性胃炎じゃないかと。点滴もして、痛み止めも貰ったのでお昼と夜に飲ませたんですけど、効かないんです!」



「腹痛と腰痛、どっちなんですか?」



「朝はお腹の方を痛がり、今は腰痛も出てるようなんです!」



「……あぁ、そういう事ですか……」



基本的な走査でプローブを動かしてのFAST。

腰痛がストレス性胃炎?

腹痛に腰痛が加わったなど、ようやく話は理解出来た。



「B型かも。MRI行ける?」



「行けます」



プローブを片し、ティッシュで腹部にべっとりと着いたゼリーを拭って確認。

FAST中に運び込まれたストレッチャーへと女子3人ながら力を合わせて移し、検査場へと行く。
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