失翼の天使―wing lost the angel―
モニターブームに入り、データが送られるのを待たずにリアルタイムで確認。



「……やっぱB型だ」



「外科にコンサルして来ます!」



「お願い」



「“B型”ってなんですか?」



「大動脈解離のB型。破裂せず、ジワジワと染み出てるの」



「なるほど」



痛みの原因が発覚し、処置の方法が確定。

ドアを開けてOKとジェスチャーする仙田さんを点滴の用意に向かわせ、技師さんに手伝って貰い、ストレッチャーに乗せ直して救命に戻る。

薬剤での治癒を図り、痛みの改善。

外科の受け入れ準備が整うまでは観察ベッドのスペースで待機して貰う事に。



「優海先生は凄いなー。3年以上の差を感じます」



「危険予測を立ててるだけだよ」



「救命に残ろうかな……。他科に行ったら臨床経験も少なくなるし」



「けど、執刀の経験は増えるんじゃない?私は同期に比べたら少ないもん」



「あー……それはそうですよね」



「他科に行って、戻って来るのもありなんじゃない?」



「マルチに診れる器用さはないし、専門知識があった方が良いんでしょうね。俺には」



「武藤君は優秀だと思うよ?」



「そうですか?」



救命で1人でだいたい動けてる。

私には、そう思う。

それに他科に行っても救命の経験を活かして働けば、彼はエキスパートになれる筈だ。



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