失翼の天使―wing lost the angel―
初療室から持って来たエコーで、副島君は宮本先生の脇腹にアプローチを始める。



「お前、下手になってねぇか?;;」



「緊張です!」



ストレッチャーに寝かされた宮本先生は、副島君の手を掴んで圧迫の加減を教える。

“緊張”と言いながらも、半分はわざとだろう。

柔らかいお腹にプローブをプニプニさせて遊んでる筈。



「お前、これ……!」



「んお?あぁ、そこさっき、出会い頭にストレッチャーとぶつかって。痛いからやるならモリソン窩とかにしてな」



「いやいや!ここさせろ!診させろ!」



「ヤダし!」



「でも竹内-タケウチ-君、これヤバいよ!?」



「診て貰いなよ!」



「「「『…………?』」」」



何人目かに交代させたところで、一組が騒がしくなった。

こうした実施の時は、副島君は特例で、みんな冷静に取り組む。

それなのに……と首を傾げ、思わず賴真と目があった。



「ちゃんと良い?」



「は、はい……!」



輪に入り、声を掛ける。

ストレッチャーの持ち手のバーの形に青紫色に染まる皮膚。

細身の男の子のお腹が、痣の部分が微かに膨れてる。

場所を代わって貰い、触れると痛みに顔を歪ませた。
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