失翼の天使―wing lost the angel―
「ど、どうなんですか?竹内は……!;;」



「動かそう」



賴真がベッドのストッパーを外し、自身の方へと引いた。

開いた隙間に身を入れ、頭部側から押してベッドを動かして、そのまま初療室に入った。

血圧計を付け、モニター装着。



「エコー」



「はい!」



エコーを押して入って来た副島君からゼリーボトルを受け取り、傷の周囲に垂らす。



「FASTします!」



「ぶつかった時の状況は?」



「看護師さんか助手さんかわかんないけど1人で押してて……出会い頭にドンってぶつかって来ましたね」



「押してた??」



「えぇ。1人なのに」



「……“1人なのに”ね」



状況説明に呆れながら、副島君のFASTの結果を待つ。



「……交代して下さい」



よく見えなかったのか、研修医の超音波検査では基本的な交代を申し出た副島君。

前期研修医は特にで、わからない時は一定の時間が過ぎたら上級医や指導医に交代するのが暗黙のルール。

日勤でもある賴真に渡ったプローブ。



「……腸に損傷があるかも知れない。入院して安静にさせよう。細かくバイタルチェックして。それと朝ストレッチャー押してたヤツ探させて」



「わかりました」



仙田さんが頷いたのを確認し、待機する子たちに報告へと行く。
< 165 / 219 >

この作品をシェア

pagetop