失翼の天使―wing lost the angel―
分からず屋らしい電話の相手に、怒りを通り越して呆れてる兄は、静かにまくし立てる。



「お腹空いた……」



「ランチ行くか?今日はもう帰らないんだろ?」



「そうだけど……」



電話の様子を見つめてると、小さくグググ……と鳴り出した胃袋。

研修会をするとなってから、仮眠室に泊まるつもりで居たし、ご飯を食べて寝たいけど……。



「も……ダメかも……」



椅子にお尻が貼り付いたように、動けない。

身体が重たくて、動きたくない。



「お、おい?」



「はーい……」



段々と気が抜けて行く。

電話なんて無視してさっさと食事に行けば良かった。

受話器を置く兄が、私の顔を見て驚いてる。

目が半分開いてるかどうか、自分でもわからないほど、視界は狭くなってる。



「ランチ食ってから寝よう、優海!」



「はーいっ……」



小脇を抱えて降ろされ、何とか椅子から降りられた。

賴真に腕を引かれながら食堂へ。



「何、食べ……」



「優海ちゃん、俺をどんな扱いしてる?;;」



「ヤッバイ、電柱じゃない……っ」



だいたい、宮本先生がついて来てた事にも気付いてなかった。



「眠たいっ……!」



「わかってるから;;」



手をついてた宮本先生から離れ、賴真の腕にもたれ掛かる。
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