失翼の天使―wing lost the angel―
11†医者の在り方
「――おい!長崎優海って女医はどこだ!」
「……見てわかりませんか」
鷺沼総合病院に来て、もう3ヶ月。
完全に夏となった。
今日は日勤からの夜勤。
眠気を堪えながら転科の書類を作成してると、顔立ちは良いのにポッチャリとした男性ドクターが怒鳴り込んで来た。
支給されてる科別カラーのユニフォームではなく、ワイシャツにしっかりとネクタイを絞めて白衣を羽織ってる。
本当に顔立ちは抜群に良いのに、若干スラックスの丈が短いのは何故だろうか。
勿体ない、そんな言葉が当て嵌まる人。
怒鳴られてようと突っ掛かる事はせずに居ると、ずかずかとナースステーションに入って来て円テーブルをバンッと叩いて手を着く。
「この救命救急センターは、いつから慈善事業になったんだ!!」
「は?」
「どうしたんですか!」
…何で敬語?
物音に内心はドキッとするも、強気な姿勢で向き合うと、兄が初療室から飛び出して来た。
「長崎先生、頼むよ!昼過ぎに心臓外科に運ばれて来た患者、海外から戻って来たばかりで、国民健康保険に加入してないし、お金もないらしいじゃないか!」
「あ……モリグチさんですか……;;」
兄が引き攣った顔で私を見る。
…言って良いの?