失翼の天使―wing lost the angel―
--プップーッ



「処方箋出して、説明が済んだら来て」



「わかりました」



後少しで2人目も終了のところでホットライン。



『23歳女性、ビルの屋上から転落――…』



「自殺か……」



「……“自殺”……」



患者情報を聞きながら口に漏らすと、横で副島君は溜め息混じりに呟いた。



「どうしたの?」



「……死のうとしてたのに、助けるんですか?」



「それが医者の仕事。事情なんて関係ない」



私も最初の頃はそう思った。

でも、医者としては命を救う事だけを考えるかも知れない。

それで助かれば嬉しいし、その人も死ぬ運命ではなかったと、気を持ち直してくれるかも知れない。



「病院着きましたよー?聞こえるー?……ギリギリだ」



副島君と救急車を出迎え、声を掛けながらストレッチャーを押す。

返事はなく、僅かな力で握った手が握り返された。

頭を固定してるクッションを外して初療室のベッドへと移す。

鷺沼先生が触診する中、私は挿管に入る。



「どう?」



「エアーは入りましたが、あまり良くないですね」



傷だらけの顔。

前面には無数の痣。



「開くしかないな」



「はい」



心臓や内蔵が悲鳴を上げてるのは確かだ。
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