失翼の天使―wing lost the angel―
武藤君の発言に間違いはなかったらしく、項垂れる兄を気にする事なく、口を開いた仙田さんの話に、姉までもが何も返せない。

賴真の方を向き、アイコンタクトで“何か言ってあげて”と伝えるも、私の目を見ずに天を仰ぐ。



「どうしても気になって、ゆう君に聞いたら私とは違う付き合いをしてて!でも、私には優しいから特別にされてるんだなーって思いました!」



…ノロケになったし;;



「本気なのね、優太」



「40になるのに遊んでられねぇよ。鷺沼と違う」



「俺のどこが遊んでると!?これだけ優海に一途な俺に対して失礼でしょ!モラハラか?モラハラだっ!」



「俺はな、優海をここまで守って来たんだ!本気で遊んだら承知しねぇぞ!!」



「何故、私で争う事になるの?;;」



…どうして一つのテーマで話が進まないの;;



「優海」



「何?;;」



「――結婚して下さいっ!!」



「「「『えーっ!!?;;』」」」



「……いつの間に……」



「出逢った日から、結婚を考えてた。俺の人生に、隣に一生、優海に居て欲しい。……このタイミングで、しかもナースステーションで申し訳ないけど、俺は、本気。優海を愛してる」



「……賴真っ……」



兄に挑発され、カウンターチェアーから降りた賴真は、予想外に白衣のポケットから指輪を取り出した。
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