失翼の天使―wing lost the angel―
何も見てない、聞いてないと言い聞かせながら指輪が下がるチェーンを首に嵌めて貰う。

胸元で輝くそれに手を宛がってると、宮本先生が結婚指輪を兄へとアピールしてる姿を見せ付け始めた。



「結婚って何で良いんでしょうね……」



「知らねぇよ!」



「子が出来ると愛情薄れるかと思えば、嫁が日に日に可愛く思えるし。堪りませんよ!!」



「誰も可愛くないとか、子供が産まれたら愛情が薄れてくとか思ってねぇよ!」



「そんなに好きなのね!」



「……そのニヤニヤ笑うの止めてくれ;;」



「してないってば!」



…してるけど?;;

--プップーッ



「……鷺沼総合病院救命救急センター」



自覚なしのお代官様のような姉を苦笑いで見つめてると、ついにホットラインが鳴り響いた。



『駅前にあるショッピングモールの駐車場で玉突き事故が起こりました。歩行者も巻き込まれて負傷者多数。ドクターの派遣をお願いします』



「了解」



受話器を置いた兄が辺りを見渡す。



「ドクターは鷺沼と宮本と優海を出す。ナースは主任と友田。ここへの搬入は最小限にして、俺と師長を中心に何とか回そう」



「「「『了解!』」」」



指示を聞き、私たちは急いでナースステーションを飛び出した。
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