失翼の天使―wing lost the angel―
出動用のアウターを羽織りながら、むしむしとする夜の外へと出る。

車へと乗り込み、無線に流れて来る情報を聞きながら必要最低限の準備を行う。



「主任は宮本と行け!」



「はい!」



「状況整理して来るから、車の方のトリアージして」



「わかりました」



「行こう、友田」



軽傷者が集められた仮の救護所となったカフェ前へと行く宮本先生と賴真。

私は救急隊員に声を掛け、車内に残された人たちのトリアージをしに行く。



「立駐を上がろうとしてた先頭車両の車高が低く、下がってハンドルを切り直そうとしたところ、後続車が勢い良く続々と入って来てそのままぶつかったそうです」



「それで最後尾が歩道に突き出されたと……」



薄暗い立駐を駆け上がり、2台目から順に車内を確認。



「鷺沼総合病院の長崎です。わかりますか?」



「……は、い……;;」



「どこが痛いですか?」



「胸ぇ……;;」



「……赤タグ。誰か呼んで下さい」



「わかりました!」



「――先生っ!子供が!!」



「――っ!!?」



5台目に差し掛かろうとした時、6台目の運転手の男性が手を振りながら私を呼んだ。
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