失翼の天使―wing lost the angel―
「俺、手伝う?」



「そこはやる気次第じゃないですか?」



賴真に続いて椅子から降り、友田君が差し出す箱から手袋を抜く。

声を掛けて来て天真さんに、断る事も“どっちでも良い”とハッキリとは答えず。

隣から伸びた手は、手袋を掴んだ。

白衣を靡かせ、挿管チューブのサイズを指示しながら初療室へと入った。

--プップーッ



「鷺沼総合病院、救命救急センター」



『8歳女児が背後から刺されました――…』



「通り魔かも知んねぇな……。武藤は宮本について母親を診ろ。その子供は鷺沼兄弟。8歳女児は優海と副島で行けるな?」



「「「『はい』」」」



--プップーッ



『77歳の男性が自宅にて倒れました――…』



重なったホットライン。

初療室の全ベッドが埋まり、ナースたちがバタバタと動き回る。



「バイタルどう?」



「血圧が上がって来ませんね……」



仕事ぶりが落ち着いて来た副島君に呼吸管理をさせ、私は1人で腎臓の腎臓。



「……賴真先生、どんな感じですか?」



「肺やってる」



「宮本先生は?」



「こっちも無理だ。子宮やられてる」



小さな臓器に苦戦し、手を借りたいのに借りられない。

副島君のフォローをしたいけれど、目先の事に集中したい。
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