失翼の天使―wing lost the angel―
搬入と同時に処置を終えた宮本先生と、新たな患者さんを迎え入れる。

軽傷の患者さんの方を引き受け、武藤君の縫合を見守る事に。



「何かめっちゃメタボったおっさんなのに俊敏だから逃げられなかったんですよねー。あいつなんてモロ受けちゃって。大丈夫っすか?」



「うん。最善を尽くしてるよ」



見守りながらも刺された時の話を聞き、友達を心配する男の子を安心させる。

全員、同じ犯人による被害者なのだろうか。

それとも、重なったのか。



「今夜は泊まりで良いですか?」



「うん。痛み止めの指示だけ出しといてあげて」



「わかりました」



縫合を終えた為、先に初療室を出て8歳の子のカルテを作成し、情報入力。

痛み止めの指示も出し、パソコンを閉じて脱力。



「お疲れ」



「……また出来なかった……」



「仕方ないだろ?場数を踏んでないんだ。子供の臓器を扱うのは、俺だって余裕なかった」



「……うぅっ゛……」



「大丈夫だ」



仕方ない、そう自分で言えたらどれだけ楽だろう。

賴真に慰められ、泣きそうになりながら腕を伸ばすと抱き締められた。



「また赤ちゃんごっこしてるの?」



「慰められてるの……っ!!」



30前になってまで、変な遊びなんかしないって。





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