失翼の天使―wing lost the angel―



--ピー…ッ

連続通り魔事件として、ニュースや新聞でも連日のように騒がれる事になり、早5日。

ドクターカーを導入したというのに、深夜2時頃まではひたすら刺創患者さんの処置まで負われる日々。

しかし今夜、殺傷事件へと変わった。

ドクター全員で出勤とし、被害者を全員助ける事だけを誓ったのに。

兄による死亡確認で終わった。



「何で今更、心臓を突いたんだろう……」



「暴れたか、顔を見られたのかしら……」



「全員、顔は見てないんだよね。もし顔を見られた事で慌てて心臓を貫いたとしたら……」



「としたら?」



「頭の良い自信家じゃないかな?と思って。“顔を見られるなんてヘマはしない”と思って、ストレス発散でもしてるんじゃないかと思ったの。お兄ちゃんもと似てるけど、愚かじゃないからね。こんな事――…」



「……優海?」



「ハァ……ッ……!」



「キャーッ!!」



「優海っ!!……優太!鷺沼先生っ!!」



…お兄ちゃんは、意気地がなければ度胸もない。

あるのは、誰よりも長けた医術。

人を刺す位なら、助ける為にメスを入れる。



「アッハハハハ!!アーッハハハハ!!」



目の前に居る、男と違って――…。
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