失翼の天使―wing lost the angel―
有難いのか、有難くないのか。

患者さんは少なく、傷に負荷を掛けるハードさはなく勤務は終了。

痛み止めを兄に2回分だけ処方して貰い、着替えるとすぐに病院を出る。



「帰っちゃったかな……」



「誰が?」



職員専用の通用口を振り返り、ここまで会えなかった賴真を思い、溜め息。

独り言を漏らすと、死角からひょこっと顔を出した賴真。



「…………?どうした?」



「1人が嫌な気分……」



「俺も。優海の存在を感じながら寝ようかと思って」



咄嗟に駆け寄り、キツく抱き着く。

私には、賴真が居る。

なのに心が天真さんに感情移入してるのか、寂しくて仕方ない。

徒歩で出勤した為、賴真の車で帰宅。

食欲はあまりないものの、シャワーを浴びさせてる間にツナと大葉のさっぱりしたパスタを作る。

ユニフォームにパーカーで来た賴真の置いてあるシャツとジャージを出し、タオルと一緒に置いて置く。

替えはあるだろうけどユニフォームを洗い、盛り付けてる頃にはあがって来た。



「呑む?」



「止めとく」



食事を取りながらテレビを点ければ、地方ニュースのみならず、全国ニュースにも事件の話題が上がり、松田先生が今朝開いた会見映像が流れる。

院長のコメントを代弁し、頭を下げてる。
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