失翼の天使―wing lost the angel―
連れて来ただけましだろうけど、会って話しての判断にしよう。



「こんばんは」



「あぁ、妻は?」



漂うお酒のニオイ。

まだ意識はしっかりしてそうだけど、長椅子に大股を広げて座ってたり、横柄なタイプだ。



「これから処置をし、縫合をします。明らかにこれは障害事件で、私共には通報の義務が発生します。よろしいでしょうか」



「夫婦喧嘩が事件?通報を俺に問う?正気かお前」



「承知です。もちろん通報をしない例もありますが、貴方はたかが夫婦喧嘩で奥さんをガラス瓶で殴りましたよね?」



「それはあいつが……」



「正直な気持ち、お聞かせ願えますか?足閉じて」



「あぁ……」



私の発言に大人しくなった旦那さん。

大股開く足を叩き、閉じさせて隣へと座った。



「貴方、酔わないと大きくなれない良い人なんじゃないですか?」



「あぁ……。いつも尻に敷かれてる。今日は会社で飲み会だったんだ。新年度の決起集会。気持ち良く帰ったら怒られ、殴られて、結婚してからずっと抑えてたけど、我慢の限界だった……すみません」



「そうだったんですね。わかりました。通報はしません。ただ二度と止めて下さいよ?もしかしたら命も危ないですから」



「そうだよな……」



…話わかるじゃない;;
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