失翼の天使―wing lost the angel―
天真さんの1人芝居の入った物真似に、テーブルへと額を勢い良く打ち付けて固まる。



「大丈夫か?;;気にするな!;;」



「大丈夫か?気にするな!俺が守ってやるからなっ!」



そんな私の身体を起こし、額を擦って心配する賴真の物真似を始めた遥真さん。

ついにカチンと来た私は、遥真さんを一睨みして待合へ出た。

自前の白衣とユニフォームにシワが出来る事など気にせずキッズスペースとなってる小上がりの畳の上に上がり、拗ねながらテレビを点けた。



「怒らせて、馬鹿だねぇあんたたち」



「男って学習能力低いから」



呆れてる姉と紅葉ちゃんの声が聞こえる中、チャンネルをコロコロ変える。

深夜の映画などはつまらない為、ニュースを観てると翔真さんの起こした事件への判決日が決まった事が流れた。

素直に罪は認めたのに、これまで長かったような気もする。

一度だけ証人尋問で登壇したけれど、私は何も言えなかった。

弁護士さんや検事さんの質問にも上手く答えられず、裁判長からの質問で“願う事は”と問われた際、被害者として同情の目を向けられる事と同時に、加害者家族として後ろ指を指される事も覚悟を決めたから、家族の為に罪を償うように翔真さんへ訴え掛けた。
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