失翼の天使―wing lost the angel―
救命救急センターに関する資料は既に頭に入っており、思い返しながら真新しい紺色のユニフォームに身を包んだ。

パンプスを脱ぎ、大好きなテディベアが描かれた靴下を履いて、赤いコンバースのスニーカーへと履き替えた。

ナースで言うところのカーディガン代わりに白衣を羽織り、メイクを落としてマスクを着ける。

至急されたピッチと、自身のスマホをユニフォームのポケットへと沈め、ステート(聴診器)を手にナースステーションへと向かう。



「来たか」



「ありがとう」



ナースステーションには既に兄が居り、名札を受け取って、ユニフォームの胸ポケットに下げる。



「似合うじゃない?」



「何で自由じゃないのか謎だけどね」



大学病院のERでは、ユニフォームは固定のカラーはなく自由で、私は濃いめの赤のものを着ていた。

褒められても嬉しくなく、自前の膝丈の白衣の前を押さえながらカウンターチェアーへと座る。

ナースステーションの中心に置かれた円テーブルは高めで大きく、詰めれば10人は座れそうだ。



「おはようございまーす」


今日は私の初出勤の日。

特別なのかは知らないけど、救命のドクターが勢揃い。

これだけ居たら、今日は暇かも知れないな。
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