失翼の天使―wing lost the angel―
患者さんがごった返す待合。

非番のスタッフや、各科の応援からにより、何とか回してる状態。



「大池主任に指示させて症状の重い方から順に診察室、もしくは初療室に運ばせてますが、軽症患者さんも多くいっぱいいっぱいです。2人既に亡くなられてます。何とか急いで貰って下さい」



『わかった』



外科部長と連絡を取り合い、外科の非番ドクターの応援も出して貰う事に。

ホットラインに出た事で、消防から見て現場指揮は私になってしまった。

逐一、兄に報告はしてるけど、まだ症状の原因となる毒がわからず、思うように進まない。

--プップーッ



「優海先生、お願いします!」



「はいっ!」



ホットラインが再び鳴り、呼ばれて走る。



『〇〇工場の工員7名が腹痛と吐き気で……』



--プルルルル…ッ



「2分待って。……鷺沼総合病院、救命救急センターの長崎です」



『衛生研究所のノブタです。毒物が判明しました。最初にご連絡頂いた通り、ボツリヌス菌で間違いありません』



「わかりました。ありがとうございました。――すみません。受け入れます」



症状の原因が判明し、ホッとして電話を切る。

これで、残りの人は助けられるだろう。
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