失翼の天使―wing lost the angel―
「あ、鷺沼ですけど。優海先生と吞みに来たら酔い潰れてしまいまして。彼女のマンションて……」



『教えねぇ。預かれ』



「いや、俺、実家住まいですが……;;」



『何か言ったか、鷺沼』



「えー……;;って、切るなよ!;;」



とりあえず優海先生を送り届けてから、後は考えようと長崎先生のピッチを鳴らした。

しかし、まさかの解答の挙げ句、電話を切られる始末。



「あ、もしもし――…」



次は師長でどうだ。



『優太と居る私に何を言えと?それに責任持って預かってくれるのが男の役目でしょ?』



…無駄だったか;;

諦め、母親に電話を入れ、覚悟を持たせて家へ運ぶ事に。

女将にタクシーを呼んで貰い、優海先生を抱き上げて退店。

…軽っ。

引きこもり期間、どうやって生きてたのか。

元彼をそんなに想ってて、俺に出る幕は来るのか。

忘れられて居ないだろうに、思わせぶりな事を言って大丈夫なのか。

俺が恋愛経験が豊富だったら、付け入ったかも知れないのに。



「……先生ぇ……」



…“先生”か。

元彼も医者なんだよな。

呼んでるのが俺なら、苦しがるほど抱き締めるのに。

羨ましくあり、恨めしい男だ。





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