失翼の天使―wing lost the angel―
理解の出来ない現状。

そして、私より10センチは高いであろう身長(推定)170センチの院長夫人の全体重に身体も頭も悲鳴を上げそうだ。



「くっ、苦しっ……!;;」



実際は声を出す事もままならないけど。



「とりあえず降りろ!なっ?」



「えーヤダー!見てよ、この子のスッピン!嫁一同の中で一番だわ!」



「……“スッピン”……?」



「私がメイクを落としといてあげたわ!スタイルも良いし、早く嫁に来て頂戴っ!キャーッ!!」



「うぉっ……!;;」



「お袋!!;;」



一度は解放されたと思えば、第二波が押し寄せた。

鷺沼先生が院長夫人の小脇を抱えて引き剥がしてくれるも、起きる気力がない。

初対面の人にメイクを落とされ、着替えまでされ。

ましてやそれは院長夫人で!

それだけにとどまらず、鷺沼先生にスッピンを見られた挙げ句、お泊まり……?



「一生の不覚だ……」



「「え?」」



「――この度の不適たるや、本当に、本当に申し訳ありませんっ!!;;」



自身の不始末に気付き、親の名に傷をつける行為に気付いた瞬間、私はベッドから飛び降りて土下座。

三つ指云々などなく、額をフカフカな絨毯に付けた。
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