失翼の天使―wing lost the angel―
「賴真!ねぇ聞いて!」
「……何だよ」
「さっきね、大学病院に務める看護大学の後輩からラインが入ってたんだけど、優海先生の元彼を奪ったご友人のお父さんの院長が退職したんですって!」
「知ってる。で、お前がそれを知ってどうなる」
「優海先生が義理の息子に恥をかかせた為に、自ら事態収集を図ったとか」
「はぁ?」
「でも妙なのはその後。どうやら娘さんと優海先生の元彼の先生は離婚したみたいなんだけど、親子で夜逃げのように姿を消したって。元彼も、他県の系列大学病院に異動したらしいわよ。随分、彼女にお熱らしいけど、私は本当に賴真が心配。師長も優海先生たちも居ないから言うけど、あの3人のお父さんて……裏社会のボスらしいわよ」
「アホかお前!」
「「おはようございます」」
私が隆寬さんに指輪を返してから1週間後。
父親も芹那の父親である院長との面会が済み、事の結末も報告も受け、この件については終わった筈が、また関係ないところで蒸し返す女が居た。
しかもどこかねじ曲げられてる話に呆れながら、ナースステーションの前で立ち聞きしてた私と姉は、鷺沼先生が怒鳴る中、ステーション内へと一歩を踏み入れた。