失翼の天使―wing lost the angel―
大人しいどころか、肩身を狭めてる大池主任を気にも留めずナースステーションの円テーブルに3人で座り、松枝君の自習に付き合う。

実技指導も出来なくはないけど、彼はどちらかと言えば頭で理解をして、人形などでトライするタイプ。

医学書と睨めっこしながら質問を振って来る松枝君に丁寧に答えてると、ホットラインが鳴り響いた。



「鷺沼総合病院、救命救急センター」



『〇〇消防です。■■駅のホームから48歳の男性が転落しました。近くに居た人たちにより上げられましたが、意識不明です』



「わかりました。受け入れます」



--プップーッ



「鷺沼総合病院、救命救急センター」



『19歳男性が原付で走行中、車とぶつかりました。意識はありますが、腹部と足部に外傷ありです』



「運んで下さい。……優海先生は原付の青年を」



「わかりました」



指示を受けながら、姉が差し出す箱から手袋を引き抜いた。

--プップーッ



「またなの……?鷺沼総合病院、救命救急センター」



『30歳女性、39週の妊婦が自宅にて破水。受け入れ先がありません。何とか受け入れて貰えませんか』



「かかりつけは?」



『ドクターが緊急の帝王切開に入ってるそうです』



…そんな事、言われても……。
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