失翼の天使―wing lost the angel―
--プップーッ



「鷺沼総合病院、救命救急センター」



私はやれやれと手を引っ込めてると、ホットラインが鳴り響いた。

これは消防から専用の、受け入れや出動の要請が繋かって来る。



『32歳の女性が車に追突され、意識不明です。また、運転手の70歳の男性が頭部より出血、胸部に痛みを訴えてます』



スピーカーから流れる容態を聞いてると、受話器を手にする兄が受け入れを許可。



「男性は俺と武藤。女性は鷺沼と研修医で診ろ。宮本は?」



「診察室です!呼びますか?」



「や。骨盤やってたらで良いだろ」



兄が指示を出しながら、搬入口へと出迎えに行く。



「どうする?」



「とりあえず、見守ります」



見学しようと初療室に近付くと、鷺沼先生が手袋の箱を持って来た。

2枚を抜き、白衣を脱いでハンガーラックに引っ掛けて邪魔にならないように隅に立つ。

手袋を嵌めて、腕を組んで2台のベッドを交互に見る。

武藤君は落ち着き、兄の言われた通りに動けてるようだけど、2人の研修医はどうだろうか。



「松枝、挿管。副島、FAST(エコー)出来るか?」



「やってみます!」



鷺沼先生が触診しながら研修医に声を掛ける。
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