失翼の天使―wing lost the angel―
「あ……!いや、大丈夫です。運んで下さい」



「また搬送?」



「39週の妊婦です。仙田さん出来るよね?」



「はい!」



「19歳男性、入ります!」



「大池さん、仙田さんの介助入って」



「仙田さんのですか?」



「他のナースより少しは動けるでしょ!確かここの救命に来る前、色々と回ってたって言ってたわよね?総師長も言ってたし」



「すみません、師長……」



「何よ」



「産婦人科の経験ありません……嘘です……」



「「「…………!?」」」



「経験豊富さを見せないと、認定資格のない私は救命でメインを張れないかと……。でも実際は、産婦人科や小児科は追い出されて……」


救命経験が仙田さんより短いのは、私も他科の経験があるからと思ってた。

…それが何?

しかも今になって言う??



「友田君、レントゲン行こう。内蔵は問題ないし、整形外科にコンサルして、診て貰って」



「わかりました」



「……で?どうします?」



姉と大池主任がやり取りしてる間に、私の診察は終了。

私は仙田さんのフォローに入っても良い体でそう問う。

お産なんて私も経験はない。

帝王切開ならあるけど、お産の介助は学んだ事がない為、学ぶつもりでフォローに付くつもりだ。
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