失翼の天使―wing lost the angel―
「う゛ぅー……!!;;」



「患者さん入ります!」



何も言わない大池主任。

仙田さんはすぐ出産の準備に入った。

私はやれやれと首を振り、手袋を呆れと怒りの気持ちを込めながら投げ捨てて、救命にも1台ある分娩台のある処置室へと行く。



「大丈夫そう?」



「えぇ。既に頭は出てるので、このままストレッチャーで産ませます!先生、ヘソの緒だけお願い出来ますか?」



「うん。でも、教えて?」



「もちろんです!」



普段のふんわりとした可愛らしい姿から打って変わり、一段と頼もしい仙田さんに手解きを受けてヘソの緒を切る。

小さな産声を上げる女の赤ちゃん。

処置を済ませ、お母さんの汗を拭ってると、そこに涙も混じってると気付く。

私と同い年のお母さんか……。

今まで仕事優先にしてた事もあり、焦りにも気付かずに居たけれど、私もいつかこうなれるのだろうか。



「やってみても良いかな?」



「はい!お願いします」



仙田さんに近付き、声を掛けて産湯に手を入れた。

赤ちゃんの頭を左手で支え、ガーゼで首回りを撫でるように優しく洗う。



「凄いよね、同い年で……」



この子のお母さんも、仙田さんも。
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