失翼の天使―wing lost the angel―
「あーっ!!;;」



「おめでとうございます!やり直しです!」



今日も無事に終わるだろうと思ってると、ナースステーションの隅で副島君が悲鳴をあげた。

仙田さんに手伝って貰いながら、上半身だけの人形でドレーンを入れる練習中の副島君。



「意外と鬼な部分のある彼女さんですね;;」



「ニヤニヤして、俺よりひでぇな」



「…………!?;;」



…貴方よりましでしょ!;;

かなりましだと思いますけど!?;;



「挿管の練習にしようかな;;」



「経験済みな事をしても上達しません!何事も経験して上手くなるんですよ。だから今は出来ない事を練習して、実践して行かないとダメなんです!患者さんを助けたいですよね?はい、もう1回!」



でも、頼れるナースが居るのは、ドクターとしては有難い。

安心して目先の事に集中が出来るから。



「ちょっと良い?ICUのササオカさんの様子がおかしいの!」



「わかった」



2人を微笑ましく見てると、姉がナースステーションに飛び込んで来た。

兄とアイコンタクトし、私は頷いてICUへと走った。

ササオカさんは78歳男性。

食道がんの為、食道亜全摘術(食道とリンパ節を切除し、胃を持ち上げて残っている食道とつなぎ合わせる)という大手術を癌センターで受けた後、奥さんの都合で転院して来た。
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