失翼の天使―wing lost the angel―
「……腎不全を起こしてる。透析の準備して。長崎先生に伝えて、鷺沼先生も呼んで」



「わかりました」



プローブを当て直し、腎臓を確認すると体液の逆流が見受けられた。

若干の腫大も見られ、私は頭を抱えながらパソコンでカルテを再度、確認。

処置をし、関係者がナースステーションに集合してる事を確認し、容態変化の理由、処置の内容や現在のバイタルを報告。



「俺……ボルタレンを出してませんが」



「でも現に投与されてて、薬剤性腎不全だとわかっただろ!」



「…………、」



困惑気味の鷺沼先生。

怒鳴る兄に、何故か顔面蒼白の大池主任。



「腰痛についても報告を受けて――…」



「ごめんなさい……」



「どうしたの?大池さん」



「ドクターがミーティング中でしたし、鷺沼先生が痛み止めとしてよくボルタレンを指示してたので……っ」



「勝手にっ!?」



「申し訳ございませんでした……っ!」



「申し訳ないじゃすまねぇだろーがッ!!」



「「「『…………』」」」



ついに起きた、あり得ない医療ミス。

兄の怒鳴る声が更に大きくなり、ナースステーション内はシーンとなる。
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