失翼の天使―wing lost the angel―
誰もが手を止め、大池主任を見るに見れない。



「鷺沼が“よくボルタレンを指示する”と言ったが、医者は副作用や患者の年齢や状態を考えた上で薬を出してんだよ!ナースが勝手に判断するのも問題だが、薬についてまともにわかってないヤツが何してんだっ!患者を殺す気か?お前の一言で鷺沼の立場まで危うくさせるつもりか――ッ!!」



「本当に、すみませんでした……っ゛……」



深々と頭を下げた大池主任への兄の怒りは、引く事なく目を背けられた。



「ササオカさんの奥さん。それと院長と総師長に連絡してくれ」



「わかったわ」



「部長には俺から連絡するから、3人揃ったら優海から説明しとけ」



「はい」



「奥さんには俺と師長で謝罪する。悪いがここは鷺沼に任せる」



「はい……」



「……ハァッ……」



兄の指示、そして重い溜め息にただ返事をするしか出来ない。



「貴方はここで、沙汰を待ちなさい。友田君、ササオカさんのバイタルチェックよろしくね」



「わかりました」



連絡する為に、スタッフ名簿を開いた姉が差し出す報告書を受け取る。

カルテに記載された内容と、私が行った処置からの流れを事細かく記入して、管理委員会へ提出の用意。
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