失翼の天使―wing lost the angel―
書き終えた頃に部長も来て、3人に事の経緯を全てを報告。

私は院長と総師長からの伝言を受け取り、ナースステーションでただ泣き続ける大池主任の前に立った。



「管理委員会からの聴取があるかと思いますが、それまでは謹慎との事です」



「……はい……」



“お疲れ様でした”なんて言う空気でもない。

頷いた大池主任は静かに立ち上がり、周りの視線を避けるように、俯いたままナースステーションを出ようとする。



「貴方の勝ちですね……優海先生」



「…………」



「賴真に出来る事が、貴方が来てからなくなった……。私は、優秀じゃ――…」



--パシン…ッ



「……っ、た……」



「私、大池主任と勝負してたつもりありませんけど。それに今、貴方が“賴真”と呼ぶ度に鷺沼先生は苦しくなるだけってわかりませんか?ササオカさんは命は助かったかも知れません。だけど、貴方のせいで一生、透析治療を受け続ける。わかります?貴方のせいでです。鷺沼先生よりも、もっと考える事があるんじゃないですか?」



喧嘩を売ってるつもりはないだろう。

しかし、出入り口前で立ち止まるなり、声を掛けて来た大池主任に腹が立ち、思い切り頬を引っぱたいた。
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