失翼の天使―wing lost the angel―
「何でよ……っ……。みんな、して……何で……この人、庇うのよ……ッ」



寸前のところで鷺沼先生が私に覆い被さって来て、周りに居た副島君やナースたちが止めに入ろうとしてくれた。



「これは何の真似だね」



「……おじ様っ……」



「大丈夫?」



「はい……」



良し悪しもわからないタイミングで、院長がお出まし。

私の顔を覗き込みながら聞いて来る先生に気丈に振る舞って返事をするも、ユニフォームの裾を掴む手が震える。

殺されるんじゃないかと思った。

そんなの、恐怖以外の何でもない。



「許さね――…」



「優海を傷付けるヤツは、男も女も関係ねぇ。わかってんのかてめぇ!!」



「ちょっと、優太!;;」



鷺沼先生が怒り出すかと思えば、院長の後ろに居た筈の兄がまた怒鳴る。

慌てた姉が腕を掴んで止めようとするも、男の力には敵わず、ジリジリと大池主任に近付いて行く。



「先生、落ち着きましょう!;;優海先生は、鷺沼先生がちゃんと守りますから!;;」



「「「『仙田(さん)……;;』」」」



その返事、今は違う;;

確実にタブーである;;

空気が読めてない仙田さんに一斉ツッコミが入る中、院長は大池主任のハサミを取り上げた。
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