失翼の天使―wing lost the angel―
握られたままの手を見つめながら、小さく溜め息を漏らす。

このまま、私は彼の手を握り続けて良いのだろうか。

離れて行くどころか、奪われたりしない?

またこんな目に遭ったりしない……?

自分の中に見付けた気持ちに気付くと同時に、とてつもない不安が襲う。



「…………、」



「どうかした?」



咄嗟に手を引っ込めると、私を不思議そうに見て来る先生。

「いいえ」と平常心を心掛けながら告げ、姉に駆け寄って、息抜きへと誘う。

自販機でコーヒーを買い、中庭に出て溜め息。



「で?どうしたの?」



「……私、どうかしたら良い?」



「ん?」



「怖い……。好き、だけど……怖いの……」



寒くないのに。

手にしてるのはホットコーヒーなのに震える。



「何事も、誰だって最初は不安よ。きっと前の恋も不安だった筈よ?どうしたら彼に見合うのか、彼に愛して貰えるか。優海も悩んで来たでしょ?恋には付き物なのよ。良い恋をする為の試練ね。あの傷も、いつか笑い話に出来る。良い思い出になるわ」



「……そうなのかな……」



「大丈夫よ、優海!私と優太がついてるんだから!」



…最強の、頼もしい味方がね……。
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