失翼の天使―wing lost the angel―
姉に抱き締められ、私はぎこちないながらも腕を回し、ぎゅっとしがみつくように抱き着いた。

年の差があり、抱っこやおんぶをして貰った記憶はどことなくあるけれど、ハグをしたのは初めてかも知れない。



「人は傷付いたり、失敗して強くなるの。優海はまた大人になったの。安心して、鷺沼先生の胸に飛び込みなさい」



「別にっ……、鷺沼先生とは……っ」



「見てたらわかるわよ。わからないのは、先生とあんただけよ」



「うっ……;;」



強がってみるも遅く、完全にバレバレ。

私自身が気付く前からとは……どれだけわかりやすいのだろうか;;

鷺沼先生にバレてなかっただけ、幸いなのか。



「優海先生、師長。お取込み中に申し訳ないんですけど、今日はすみませんでした。俺はとりあえず上がります」



「あら先生、略奪しに来たんじゃ?」



「なっ!?“略奪”!??;;」



「優海」



「うん……」



帰る前に、挨拶に来てくれた鷺沼先生。

姉が彼をからかいながら私から離れ、中へと入り、鷺沼先生の背中を押して、中庭へと押し入れた。



「俺……やっぱり何かやらかした?;;」



閉まる扉に振り返りながら、頭を掻く鷺沼先生。
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