失翼の天使―wing lost the angel―



――腹も立つほど良い天気に恵まれた日曜日。

夜勤から日勤と続き、月曜日の夜勤まで休みの鷺沼先生は、朝から元気よく私のマンション前に居た。

着替えとメイクは病院で済ませた為、私は爽やかな笑顔にムッとしながら駐車場へと挨拶なく向かう。



「ん?何か怒って?」



「眠いんです。なのに先生の顔が煩い」



「“顔が煩い”!?てか、そろそろ先生は止めよう」



「鷺沼、乗れ」



「だから物真似いらないから」



愛車の光り輝く真っ白なベンツB180を施錠しながら鷺沼先生と車を挟んで対峙。

恥ずかしい乙女心も知らず、真顔で言われてぷくーっと頬を膨らます。



「優海?」



「……何て呼べば黙ります?」



「賴真。嫌なら帰ろうか?」



「それはわざと言ってるんですか……」



「え?」



“帰ろうか?”なんて言われると思わず、弱くなる私を見て目を見開いた彼に、意地悪で言ってはないんだとわかるけど、弄られるのは初めてで対処に困る。

ましてやわざとじゃないなら余計に。



「賴真……」



「何?」



「帰るんですか……?」



「いや?一緒に居れるのに、離すわけない」



…無自覚で何を言うんだ;;

やっぱり帰せば良かっただろか;;
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