再殺動
事件当日

朝の校舎内はシンと静まりかえっていた。
始は半信半疑のまま、スマホを片手に指定された中央階段まで歩く。

『新しいアプリ』がインストールされた。
それ以外の情報はなかった。
執事代わりのアプリなら以前も入っていたが、『トワ』がインストールされてからは忽然と姿を消していた。

中央階段のところに差し掛かったとき、そこに人の気配がした。思わず体が硬くなる。

まじで、道葉有がいんのかよ。

喉を鳴らす。

直後、ふわりといい香りが始の鼻をかすめた。
覚えがある。道葉有の香りだ。いつも同じ香りだけど、この香りは誰ともかぶらない。

踊り場に出ると、そこには壁にもたれて下を向きながら鼻唄を歌う道葉有がいた。

窓から差し込んでくる朝の光が茶色の髪の毛に当たり、うっすらとブロンズ色に輝いている。

腰まであるストレートの髪の毛が体を揺らす度に左右に緩くなびいていた。

細身の身体だが、スタイルのよさは制服の上からでもわかる。

始は意を決し、

「道葉、おはよう」

震える体をごまかし、声をかけた。

「え、あ、うん。おはよう」

道葉有はびくりと体を震わせた。
気まずそうな笑顔で軽く挨拶をし、また同じように下を向いた。
< 20 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop