再殺動
「あの、連絡くれてありがとう。まさかそんな風に思ってくれてるなんて。びっくりして昨日よく眠れなかったよ」

へらへらとした笑いを浮かべて頭をかきつつ有の近くまで近づいた。

「……は?」

あからさまに機嫌の悪くなった有の顔には嫌悪感がはっきりと浮かんでいる。

うっわー、これが本物かよ。いつもの態度とぜんぜん違うし。芝居の稽古っていっても本気かよ。だったら俺もちゃんと成りきらないと失礼だよな。

「嬉しかった。その気持ち。で、俺ちゃんと聞いてきてるから、今から本番な」
「だからさっきから何言ってるのかさっぱり分からないんだけど。なんなのいったい」

有の声のトーンが低くなり、汚いものを見る目で舌打ちをした。

「あー、了解。なんか上手くできるかわからないけど俺もやってみるわ」
「だからまじキモい。私、人待ってるんで用事ないなら、もういいかな。話してる時間、ないんで」

作り笑顔には明らかに嫌悪が見て取れる。
有は始のことをよく思っていない。女子のファンは大切にするが、男子のファン、しかも見向きもされないようなデブでオタクな不細工とは話すのも嫌なのだ。

「学園ドラマ決まったんだって?」
「ちょっと、なんでそれ知ってんのよ」

目を見開く。その情報は、有の事務所と有自身、そして昨夜連絡をした健司しか知りえないことだった。
今日もこれから健司とここで会う約束になっていた。
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