再殺動
「おめでとう」
「ねえ、さっきから一人で話進めてるけどなんなの? ほんとにキモイんだけど。それ以上近寄らないでよね。それにもうすぐ『彼氏』来るからあんたどうなっても知らないよ」
「ああ、その彼氏役は下で支える奴だろ?」
「意味わかんない。もう無理。気持ち悪すぎる」

有は両手で自分の腕さすり、気味悪がった。
始から逃げるように階段を駆け下りたその直後、

「おまえ、俺ってものがありながらー」

棒読みに言った始が予定通り有の背中を力一杯押した。
有の体は簡単に宙に舞う。そのまま重力にひっぱられ階段下へ無様に吸い込まれていった。

有は突然のことに悲鳴も出なかった。押された衝撃で声が詰まり、首に痛みを感じ、次の瞬間には眼前に階段が迫っていた。なんとか腕で顔をかばったが、直後、すさまじい衝撃を体中に受け、その感覚を最後に意識を失った。

受け止めるはずの人は現れない。気配すらしない。
ここにいるのは有と始の二人だけだった。
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