再殺動
★★★
「瑠璃、有が死んだ」
「どういうことそれ、トム、ねえ、何があったの?」

小声で話す二人の全身から冷たい汗が吹き出した。

「わからない。でも、死んだんだ」
「そんないきなり」
「中央階段から落ちたって話だ」
「……中央階段て、嘘でしょ」
「同じように突き落とされたって」
「偶然だよ。偶然の一致だって、ね、そうでしょ」
「俺もそう思いたいけど」
「偶然。そうだよ、階段から落ちたのだって偶然だよ」
「……そうだよな」

電話ごしに二人は小さく頷き、同時に唾を飲んで乾いた喉を潤した。

瑠璃も既にクラスのグループラインで有が死んだという連絡を受けていたが、その原因までは知らなかった。

「トムは大丈夫? そっち行こうか」
「いや、今日はお互い家から出ないほうがいい。とりあえずちょっと頭整理する」
「わかった。なんかあったらすぐ連絡して。いつでもいいから」
「ありがとう」

有が死んだ場所は二人にとっては忘れられない場所だった。
そこにはもう二度と行かない。行けない。行っては行けない場所だった。だから、

二度と思い出さない。そう誓っていた場所だっただけに、動揺は隠せなかった。
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