再殺動
「そんなこと言ってたなんて信じられない」

「俺だってそうだった。でも、あいつは本気だった」

トムの話を聞いた瑠璃は、健司の頭の中には自分よりも有のことがあるとそう感じた。しかし、モデル仲間として会っていたと言った健司のことばを信じたい。

「私、どういうことなのか聞いてくるよ」

「行ったところであいつの頭の中には有しかいないぞ」

思わず出たことばに、「ごめん。こんなこと言うつもりなかったんだ。つい」即座に謝った。

瑠璃は軽く頭を左右に振り、

「ネットニュース見たでしょ。トムが言った通り彼の頭には今は有しかいない。でも、今だけだよ。トムのところに連絡がきたのも、モデル仲間の一人が死んだからで、その怒りをぶつける先が分からなかっただけだと思う」

自分自身に納得させるように力強く頷き、

「犯人探しに没頭してるんだよ。ただ犯人を見つけ出してみんなの前に突きだそうとしてるだけだと思うんだ」

有は死んだんだ。犯人を見つけ出したところで有が帰ってくるわけじゃない。
でも、全てが終わったら私のところに帰ってくるはず。

そう強く願うように、その気持ちが本当であると信じるように、瑠璃は自分自身に言い聞かせた。
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