再殺動
教室では有の話があちこちのグループであることないこと憶測混じりに話されていた。

中央階段は立ち入り禁止のテープが貼られ、有が倒れていた１階は規制された。

生徒たちはスマホでなんとか事故現場の写真を撮ってネットにアップさせようと集まっていたが、ことごとく先生たちに阻止された。

学校の外にもメディアや他校の生徒がおしかけてきている。

東尾健司の回りにもたくさんの生徒が取り囲み、何かしら情報を得ようとスマホ片手に健司に質問の雨を降らせていた。

トムの回りには誰も来ない。

有の彼氏はトムだという事実はみんな知っているが、その彼氏よりも東尾健司のほうが仲が良かったこともみんな知っている。

瑠璃はただ宙を見たまま無表情でぼんやりと座っている。誰とも話そうとしない。健司の彼女は自分だということもみんな知っているはずなのに、完全に無視されている現実から目を背けたかった。

トムは瑠璃に近づこうとしたが、視線を感じて振り向けば、教室の後ろの壁に背をもたれて腕を組み、自分を睨み付けているあかねと目が合った。
左右にはいつもあかねにくっついている愛子と心海がいた。

無言の圧の意味は分かっている。
トムは瑠璃のところへ行こうとした足を止めて自分の席に戻った。

瑠璃と同じように宙を見つめ、ただ時間が過ぎるのを待った。スマホに目を落とし、有のことが書かれている記事を探し始めた。
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