お見合い相手はエリート同期
絶対に部長へ抗議してやる!って鼻息荒く言っていた私は勢いそのままに部長の側まで歩み寄った。
「部長!お時間よろしいでしょうか。」
「あぁ。高橋さん。
今日もご機嫌麗しいね。」
これだから嫌になっちゃう。
私のどこが麗しいのかハッキリ説明してみせて欲しい。
ぼんやりのほほんとしてて、恰幅もいいからタヌキジジイなんて呼ばれてる。
どうせならタヌキくらい悪巧みも出来る狡猾さも持ち合わせていればいいのに、どうやらこのタヌキは温室……動物園育ち?ってくらいの平和ボケ。
「昨日の件で、ちょっと。」
私は空いている会議室へ部長を招き入れて即座に用件を伝え始めた。
過去に私のことが馬鹿で嫌いだと言い放った澤口。
だから「高橋は断るなよ」の真意はつまり「は」に全て要約されていたんだと気づいた。
「高橋からは断るなよ」ってことだろう。
澤口のことだから馬鹿で嫌いな高橋から断られるというほど屈辱的なものはないんじゃないかって気がついた。
自分が断られる側にはなりたくないって、エベレスト並みのプライドかって呆れ返るけど、まぁそれでこの話が流れるならそれでいい。
この際、私のプライドなんてくれてやる。